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高麗人参とエゾウコギの違い

高麗人参とエゾウコギは異なる植物

古くから生薬として利用されてきた高麗人参はウコギ科の多年草です。オタネニンジンという和名がついており、朝鮮人参や薬用人参、あるいは単に人参と呼ばれることもあります。
この高麗人参の仲間と思われがちなのがシベリア人参と呼ばれることもある「エゾウコギ」です。日本の北海道で自生していることから蝦夷地のウコギとしてこの名前がつきました。
高麗人参とエゾウコギは同じウコギ科の植物です。このウコギ科には山菜としてお馴染のウドやタラノキをはじめ、トチバニンジン、ハリブキ、ハリギリなどが含まれています。
ウコギ科の植物は根を中心に有効成分を多く含んでいるため、古くから生薬として利用されてきました。その中でも高麗人参は滋養強壮や健康長寿に良いことから特に有名です。
高麗人参とエゾウコギは似ているところがいくつかあります。エゾウコギにはサポニンの一種であるエレウテロサイドと呼ばれる成分が根や皮に含まれています。健康食品として利用されていて副作用が少ない点も共通しています。
しかし高麗人参がトチバニンジン属の植物であるのに対して、エゾウコギはウコギ属の植物であることから類縁性は低く、異なる種であるため高麗人参の仲間ではありません。サポニン以外の有効成分もかなり異なっています。
クロロゲン酸、イソフラキシジンなどは高麗人参には含まれていません。効果効能を見ても滋養強壮効果や免疫力向上作用は共通していますが、エゾウコギは強壮効果やストレス軽減効果が強いのが特徴です。
このため高麗人参が主に健康維持や増進目的で使われるのに対して、エゾウコギは心身のリラックスやうつ病予防に使われています。

エゾウコギとは

エゾウコギの特徴

エゾウコギは高さが2~3mほどある落葉低木で、地下に広く根を張り、枝は灰褐色をしていて、若いエゾウコギの幹は無数のトゲで覆われています。沢沿いの山中で水はけの良いやや日陰の場所が生育に適しています。
高麗人参は日本国内には自生していませんが、エゾウコギは十勝、帯広、網走、北見などの北海道東部にのみ自生しています。アイヌの人たちは古くからエゾウコギを神聖な植物と捉えていました。
シベリア人参という別名がある通り寒冷な気候を好み、北海道の他にもロシアのサハリン州やアムール州といった東シベリア一帯、中国東北部の吉林省や黒流江省でも見ることができる植物です。
中国では根と茎は「刺五加(しごか)」、根の皮は「五加皮(ごかひ)」、ロシアでは「エレウテロコック」と呼ばれています。野生の高麗人参はほとんど手に入りませんが、エゾウコギは逆に野生のものが中心で栽培はあまり行われていません。
ちなみに1973年に北海道大学と道立衛生研究所が中心に行った研究では、北海道内に自生しているエゾウコギはロシアや中国のものと同一であることが確認されています。

エゾウコギの根、茎、枝、葉には種類は異なりますが高麗人参と同じくサポニンの一種であるエレウテロサイドが含まれていて、エレウテロサイドA、B、Eなどこれまでに16種類以上が確認されています。高麗人参に含まれるジンセノサイドに似た成分であるという指摘もあります。
他にはコーヒー豆などに含まれるクロロゲン酸、イソフラキシジン、お茶に含まれるタンニンの一種であるジカフェオイルキナ酸、ゴマに含まれるセサミン、各種ビタミン、カルシウムなどが含まれています。
高麗人参よりも人々の認知度が低いため、長らくその効能が注目されることはありませんでしたが、近年では生薬として利用されることも多くなっています。

エゾウコギの歴史

エゾウコギはアイヌの人たちの間で民間薬として利用されてきましたが、日本で多くの人がその有効性に気づいたのは意外と最近のことです。実際に北海道を開拓していた外地の人たちはその価値が分からず、固いトゲを持つ雑草として嫌われて駆除されていました。
中国では2000年前以上の歴史があり、漢方薬としてリウマチや変形性関節症の炎症を抑える目的で治療に用いられていたほか、五加皮は不老長寿に良い薬酒として珍重されてきました。16世紀にまとめられた漢方著書である「本草綱目」には刺五加の名前で長寿の薬として掲載されています。
ロシアでは旧ソ連時代の1960年代に高麗人参と同じウコギ科の植物であることが注目され、科学アカデミーによって薬用としての研究が本格的にはじまります。
それによってエゾウコギには持久力や抵抗力を高める作用があり、作業効率を向上させて疲労回復にも良いことが発見されました。そして1962年に根のエキスが強壮剤として承認されると、1964年にはエキス剤の生産が開始されます。
当初は根の部分のエキスを抽出して研究が進められたため根に有効成分があると考えられていましたが、その後に葉や茎にも有効成分が含まれていて、用途によっては葉のほうが効果的であることも分かっています。
1968年にはソ連科学アカデミーのブレフマン博士によって「エレウテロコックの有用性」という論文が発表されます。この論文ではエゾウコギの主要成分は7種類の配糖体(糖とさまざまな成分が結合してできた有機化合物)であると結論付けました。
また同博士は「エレウテコロックは極めて有効な強壮剤であり、心身の能力やあらゆる細胞の機能を高める作用がある」と評価しています。このことがきっかけでソ連国内でもエゾウコギの健康効果が注目されるようになったと言われています。

健康効果

抗酸化作用

エゾウコギに含まれる主要成分の一つであるエレウテロサイドEは、イソフラボンやクメスタンで知られるリグナン化合物であり、ホルモンと同じ働きをし、強い抗酸化作用をもたらします。
そのため疲労回復、ストレスの軽減、胃潰瘍抑制、免疫力の向上といった作用が期待されています。

ストレス軽減作用

エレウテロサイドEには脳下垂体からβ-エンドルフィンという物質の分泌を促す作用もあります。
このβ-エンドルフィンは脳内モルヒネや幸福ホルモンと呼ばれることもあり、心身の苦痛やストレスを感じにくくする働きがあります。しかも鎮静作用はモルヒネの65倍あるとされています。
仕事や人間関係などで強いストレスに晒されることが多い現代人にとって、エレウテロサイドEはストレス軽減にとても有効であり、抗うつ効果、だるさや倦怠感を解消する効果が期待されています。

免疫力アップ効果

β-エンドルフィンは、NK(ナチュラルキラー)細胞を活性化することで免疫力を高めてくれます。NK細胞は白血球の10~20%を占める免疫細胞であり、体内に侵入してきたウイルスを発見すると素早く攻撃を加えて殺菌し、ガン細胞は融解して除去する役目を担っています。
β-エンドルフィンによってNK細胞が活性化されると、さまざまな感染症の罹患リスクを下げることができます。
また近年の研究ではエゾウコギが持つ可溶性タンパク質層(GF-AS)を静脈内に投与することで、ガン細胞の転移が抑制されることも確認されています。
さらに可燃性タンパク質層が脾細胞を増殖させ、マクロファージ(体内に侵入してきた細菌やウイルスを捕食する細胞)に対してサイトカイン(免疫機能の活性化や調整する役目を担うたんぱく質)の産生を促すことも分かりました。(*1)

血行促進作用

エゾウコギに含まれるエレウテロサイドBやイソフラキシジンには血液の流れを良くする働きがあり、動脈硬化、肩凝りや冷え性を予防する効果が期待されています。
ほかにも糖尿病や高血圧といった生活習慣病の予防にも効果があるとされています。このうち糖尿病に対してはラットを使った試験で糖尿病の症状が改善されることが確認されています。(*2)

女性ホルモンのサポート

エゾウコギにはピノレジノール・ジグルコサイドという物質が含まれていて、体内で女性ホルモンに近い働きをするエンテロラクトンという成分に変わることが分かっています。
そのため女性ホルモンの分泌量低下によって引き起こされる更年期障害の症状を緩和する効果が期待されています。
また女性ホルモンが不足することで骨密度の低下に繋がるため、更年期障害の女性は骨粗しょう症を発症しやすいとされています。
そこで骨減少症または骨粗しょう症を発症した女性81名を対象に、カルシウム1日500mgとエゾウコギ抽出物1日3gを6ヶ月間摂ってもらいました。
その結果、骨の形成に関係する血清オステオカルシン濃度が上昇することが確認され、エゾウコギ抽出物を摂ることで骨の形成が促される可能性があることが分かりました。(*3)

エゾウコギとスポーツの意外な関係

エゾウコギが世界的に知られるきっかけとなったのが1980年に開催されたモスクワオリンピックです。当時は冷戦の真っ最中であったことから、東側諸国が参加をボイコットするという異例の中で行われたモスクワオリンピックは何かと物議を醸しましたが、メダル獲得においてソ連勢が東ドイツなどの他の参加国を圧倒する結果になりました。
このようにソ連勢が躍進した裏にはエゾウコギの存在があり、好成績を残した選手が好んでエゾウコギエキスを摂っていたこと、この成分がドーピングの対象外であることから大きな話題になりました。それはエゾウコギエキスには選手の疲労を抑制し、持久力を向上させる効果があるためとされています。
さらに1980年代にはイギリスの科学雑誌「ニューサイエンティスト」でトップアスリートに対するエゾウコギの効果をまとめた論文が発表されます。
日本でも1990年代以降、高いパフォーマンスを追及するアスリートや、極限状態の中での活動をしいられる宇宙飛行士がエゾウコギを摂っています。

摂り方

エゾウコギはサプリメントや粉末、ドリンク、お茶などさまざまなタイプがあります。粉末タイプのエゾウコギは1日2~3gが適量とされています。体内に吸収されやすい食前や食中などの空腹時の摂取がおすすめです。
どのようなタイミングで摂っても効果はありますが、一度にたくさん摂ったからといって多くの効果が得られるわけではなく、適量を守って続けることが大切です。極めて毒性が低いため副作用も特にないとされていますが、降圧剤やホルモン剤との飲み合わせには注意が必要です。
生薬のエゾウコギは煎じて飲むのが一般的ですが、お酒に漬けてエゾウコギ酒を作ることもできます。作り方はしっかりと密閉できるビンを用意して、焼酎1.8Lに対してエゾウコギ60gを漬け込むだけです。1ヶ月ほどで出来上がります。
春先に採れるウコギの若芽が手に入る方は、昔ながらの若芽をご飯と一緒に炊き込む「ウコギご飯」を試してみてください。

ウコギご飯の作り方

【材料】うるち米 3カップ もち米 1/2カップ ウコギ 100g 酒 大さじ2 ゴマ 30g 塩 少々 水 750cc

  1. 米をといで分量の水に30分漬けておきます。
  2. 酒と塩を加えて炊き上げます。
  3. ウコギを洗い、塩を加えたお湯で茹でて水にとり、冷めたら固く絞って水気を切りみじん切りにします。
  4. 炊き上がってご飯に3を加えて混ぜ合わせ、上からゴマをふりかけて出来上がり。

*1 参考元:Anti-metastatic activity of glycoprotein fractionated from Acanthopanax senticosus, involvement of NK-cell and macrophage activation.
*2 参考元:Anti-diabetic activities of Acanthopanax senticosus polysaccharide (ASP) in combination with metformin.
*3 参考元:The effects of Acanthopanax senticosus extract on bone turnover and bone mineral density in Korean postmenopausal women.

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