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高麗人参の原産国はどこ?

高麗人参はどこで採れるのか

滋養強壮効果で知られる高麗人参は日本でも江戸時代には高価な薬として流通していました。いまでも漢方薬などに使われ変わらぬ人気を誇っていますが、高麗人参はどこで生産されているのでしょうか?

高麗人参と言うくらいですから韓国や北朝鮮を思い浮かべます。確かに野生の高麗人参は朝鮮半島や中国北東部、ロシア沿海州の北緯39度から47度の寒冷な地域に自生しています。

朝鮮半島を治めていた歴代の王朝は高麗人参を独占し持ち出しを厳しく規制していました。やがて需要を満たすため、あるいは一攫千金を狙った人たちの手によって野生の高麗人参が乱獲され手に入りづらくなると、人の手による栽培が試みられるようになります。

今でも野生の高麗人参はほとんど手に入らないため、私たちが入手可能な高麗人参のほぼ全ては栽培されたものです。高麗人参の栽培はとても難しく手間も時間もかかります。

ところが朝鮮王朝は栽培方法の研究や個人による栽培を厳しく取り締まったため栽培の記録が残らず、韓国でも長らく本格的な栽培が実現しませんでした。

日本では秀吉の時代に朝鮮半島から持ち込まれて以降、多くの権力者が栽培を試みました。しかし、栽培方法が分からないことと気候の違いなどによってその度に失敗し、初めて栽培に成功したのは江戸時代中期に入ってからです。

現在、全体の70%以上は韓国と中国で栽培されています。とはいえオタネニンジンという和名がついているくらい日本でも栽培が盛んであり、韓国や中国と比べると出荷量は少ないものの、その質の良さから高い評価を得ています。

高麗人参の原産国

韓国

栽培の歴史

朝鮮半島では紀元前1世紀に栄えた高句麗に始まり19世紀に滅亡した李王朝まで、それぞれの王朝によって高麗人参の権益が独占されてきました。生薬として根強い人気を誇った高麗人参は朝鮮半島のほか中国や日本でもその需要が高く、高価な交易品として国や王室の貴重な財源となっていました。

しかし、乱獲によって野生の高麗人参が激減すると、それまで山に入って人参採りをしていた人たちは収入のあてがなくなります。そこで試みられたのが人の手による栽培で、李王朝下の18世紀に初めて成功しました。

当初は高麗人参で財を成そうと多くの農民が栽培に挑戦しました。ところがただでさえ栽培が難しく、ノウハウがないと発芽させることすら困難である高麗人参の栽培は困難を極め、初期に収穫されたものは野生のそれよりも大きく品質が劣っていたと言われています。

やがて朝鮮王朝は高麗人参や栽培方法の外国への流出を厳しく統制します。韓国で高麗人参が本格的に栽培されるようになったのは日本の栽培技術が持ち込まれた日本統治時代に入ってからです。

代表的な産地

韓国で高麗人参の栽培が盛んな地域には慶尚北道栄州市豊基、忠清南道錦山郡、仁川広域市江華郡、京畿道坡州市などがあります。

豊基(プンギ)

韓国中部に位置する栄州市の行政区域の一つです。豊基を含む慶尚北道は太白山脈と小白山脈に囲まれた盆地であることから、朝晩の気温差が激しく高麗人参栽培に適した土地柄です。
その中でも小白山で栽培された「豊基高麗人参」はとても品質が良いことから特産品となっています。毎年10月を過ぎると収穫が始まりますが、その最盛期に合わせて「栄州豊基高麗人参祭り」が開催されます。
豊基産の高麗人参は人参サポニンが豊富に含まれていることから、栄養価が高くより高い健康効果が期待できるとされています。

錦山群(クムサンぐん)

韓国西中部に位置し、山が多く農業や酪農が盛んな地域です。朝晩の気温差が激しいため古くから高麗人参が栽培されてきました。韓国では「高麗人参の里」として有名です。
錦山産の高麗人参は高品質でサポニンやゲルマニウムを豊富に含むことから、人参流通の中心地であり韓国全体の約8割の高麗人参を生産しています。

その中でも「人参の町」と呼ばれる錦山邑(クムサンウブ)と中島里(チュンドリ)では、毎月2と7がつく日に「錦山人参市場」が設けられます。

国内最大規模を誇り韓国で生産される高麗人参の約8割が取引され、質の良い高麗人参が手に入るため大勢の人で賑わいます。さらに毎年9月には「人参祝祭」も催されます。

江華郡(カンファぐん)

仁川国際空港を有する仁川広域市の北西部に位置し、北端は北朝鮮と接していて西側は京畿湾に面しています。江華島、喬桐島、席毛島の3島とその他の小さな島々からなる農業が盛んな地域です。
そんな江華郡の特産品である高麗人参は「江華人参」と呼ばれ、20世紀の初めに北朝鮮の開城から栽培方法が伝わり、朝鮮戦争によって多くの人たちが北朝鮮の開城から移り住んできたことで栽培が本格化しました。
海に面した地域性と地質の影響によって、比較的重さがあり硬くて香りの強い高麗人参が人気を呼んでいます。最盛期には国内の生産量の約4割を占めていましたが、近年は栽培面積を大きく減らしています。
江華島には江華人参センターがあり、良質の高麗人参が買えることから国内外から観光客が訪れ賑わいを見せています。

坡州市(パジュし)

坡州市で栽培された高麗人参はサポニンが豊富に含まれ、香り高く、密度が濃いことから根強い人気があります。坡州市でこのような栄養価の高い高麗人参が採れる理由は、生育に適した条件が全て揃っているためです。
夏は涼しく冬は暖かい気候のため生育に時間のかかる高麗人参の発育に最適です。2005年から毎年10月には「坡州開城高麗人参祭り」が開催されています。
坡州市職員が採掘と選別に関わり、6年根高麗人参の確認を行ったあとに鍵がついた収納ボックスで保管します。このような厳しい品質管理が行われているため、より質の高い6年根のみを扱う農産物祭りとして有名になりました。

北朝鮮

代表的な産地
開城市(ケソンし)

北朝鮮で高麗人参の名産地として有名なのが開城市です。古くは高麗の都が置かれ商業で栄えた開城は、北朝鮮南部の主要都市の一つであり推定人口は35万人を数えます。
この地で高麗人参は王へ献上する目的で栽培されたのがはじまりと言われ、当時から開城産の高麗人参は高級品として高い評価を得ていました。
現代においても開城産の高麗人参はその質の良さから最高級品として珍重されています。開城は典型的な朝鮮半島内陸部の寒冷な気候であり、「松都」と呼ばれるほど松が自生する山で囲まれているため、松と相性の良いと言われる高麗人参の栽培に適しています。
そのため日本産のものと比べて栄養価が高く、有効成分も豊富に含んでいます。また開城の高麗人参は「胴が短く脚が太い」まるで女性のように形が美しく、根が大きいことから高い人気を誇っています。生の高麗人参のほかにも人参酒も有名で北朝鮮を代表する名産品です。

中国

栽培の歴史

高麗人参の故郷と呼ばれる場所があるのが中国です。一説ではおよそ四千年ほど昔、朝鮮民族の祖先が自生している高麗人参を採り始めたと言われています。
その後、高麗人参が滋養強壮や病気の治療などさまざまな効果があることが中国全土に伝わると、漢方薬として珍重されるようになります。
中国でも高麗人参の需要は高く歴代の権力者によって栽培が試みられてきました。古くは不老長寿を求める秦の始皇帝が山に自生する高麗人参を常に捜し求めていたと伝わっています。
中国三大美女に数えられる楊貴妃も高麗人参を摂っていたと言われています。希少であり高級品であった高麗人参は中国でも皇族や貴族のみが口にできる薬だったのです。
1~2世紀にまとめられた本草書「神農本草経」には副作用の少ない上薬として紹介されています。また当時の中国では、根をそのまま食べたり、煎じて飲んでいたという記録が残っています。

代表的な産地
白頭山(はくとうさん)

中国で最も有名な産地と言えば白頭山です。中国吉林省と北朝鮮両江道の国境地帯、ちょうど朝鮮半島の付け根に位置する標高2744mの火山で、長白山とも呼ばれています。
白頭山の高麗人参は「長白山人参」と呼ばれていて、農薬や化学肥料を使わない野生に近い環境で栽培しているため、高品質の高麗人参と世界的に高い評価を得ています。
中国は高麗人参の生産量世界一を誇っています。しかし、中国産は質が悪いというイメージによって、韓国産の1/10という低価格で取引され、中国産を韓国産と偽って販売する産地偽装が後を絶たないのが実情です。
そこで中国では野生の高麗人参を復活させるプロジェクトが開始され、2011~2013年にかけて白頭山の森林に高麗人参の種子を合計9t、面積にして19万ヘクタールもの広範囲に空中散布されました。
この種子は4代目になると野生のものとほとんど同じものになるとされています。それまでには数十年かかるため成果が出るのはまだまだ先になります。国を挙げてのプロジェクトによって、中国産高麗人参の質向上と収穫量の増加が期待されています。

日本

栽培の歴史

オタネニンジンという和名は、江戸時代に徳川幕府八代将軍徳川吉宗が対馬藩に命じて朝鮮半島から高麗人参の種と苗を手に入れ、各地の大名に「御種」を分け与えたことに由来しています。
日本においての高麗人参栽培の歴史は安土桃山時代にまで遡ります。1592年、豊臣秀吉の朝鮮出兵によって高麗人参の種が日本に入ってくると幾度となく栽培が試みられます。

秀吉の軍師であり後に福岡藩の礎を築いた黒田官兵衛は、朝鮮出兵後に隠居しますが高麗人参の研究に尽力したと言われています。官兵衛の祖父である黒田重隆は目薬を売る商人であり、原料である薬草も自分で育てていました。
その影響もあってか高麗人参に興味を持ちますが、戦国の世で知略を働かせて秀吉の天下統一を後押しした官兵衛をもってしても、種を発芽させることができず高麗人参の栽培には成功しませんでした。
さらに秀吉の家臣であり会津の地を治めていた蒲生氏郷は1593年に高麗人参の種を会津若松城下に蒔きましたが、官兵衛と同じく発芽させることができませんでした。
当時の日本は現代よりも気候が寒冷であり、会津は高麗人参が自生する朝鮮半島に近い気候でした。それでも発芽すらしなかったことはいかに高麗人参の栽培が困難であるかを表しています。
時代は進み徳川幕府三代将軍家光は、李氏朝鮮が高麗人参の持ち出しを禁止したため入手が極めて困難でありながら、苗を数本持ち込むことに成功します。家光は朝鮮半島に気候が近い仙台で栽培を試みましたが、残念ながら成功しませんでした。

日本で高麗人参の栽培に初めて成功したのは八代将軍吉宗の世になってからです。1729年、吉宗から高麗人参栽培御描に任ぜられた吹上奉行の西脇重郎左衛門は、日光今市宿の篤農家大出伝左衛門に苗を託し本格的な栽培がはじまります。
やがて寛政年間(1789~1801)になると、幕府の御用作として野洲、信州、雲州、奥州での栽培が中心になります。こうして日本でも高麗人参が本格的に栽培されるようになりました。

代表的な産地

韓国や中国と比べると生産量は少ないものの、福島県会津地方、長野県東信地方、島根県松江市大根島などで高麗人参が栽培されています。

福島県会津地方

福島県会津地方は周囲を山に囲まれた盆地であるため、夏は暑く冬は寒くて雪が多く朝晩の気温差が大きいのが特徴です。そのため気候が高麗人参が自生する朝鮮半島に近く、日本の中では栽培に適した土地と考えられてきました。
古くは豊臣秀吉の家臣である蒲生氏郷が栽培を試みましたが発芽させることができませんでした。江戸時代中期に入ると栽培に成功し、やがて日本でも数少ない高麗人参の産地として知られるようになります。
会津地方で作られる高麗人参は「会津人参」と呼ばれています。その歴史は300年ほどあり、1670年二代藩主保科正経によって薬草園が設けられ、三代藩主松平正容が幕府から高麗人参の種子を譲り受けたことによって栽培がはじまりました。
会津若松市には会津人参の発祥の地であり、高麗人参栽培の歴史を伝える「御薬園」があり、約400種類ほどの薬草薬木が栽培されています。

長野県東信地方

長野県東信地方は上田・佐久地方と呼ばれることもある、長野県東部の千曲川流域に広がる地域です。北には浅間山、南には八ヶ岳、東には碓氷峠、西には北八ヶ岳と周囲を山に囲まれた盆地であるため、典型的な内陸性気候で寒暖の差が激しいのが特徴です。
そんな東信地方の気候は高麗人参の栽培に適しており、江戸時代には天領だったこともあり、160年ほど前から栽培が行われてきました。この地方で採れる高麗人参は「信州人参」と呼ばれて、古くから生薬として利用されています。
その歴史は1846年、現在の佐久市志賀に住む神津孝太郎という者が、日光や会津から高麗人参の種子を密かに持ち帰り試行錯誤を重ね、安政から文久年間(1855~1864)に栽培に成功したことからはじまります。その後、近隣の村でも栽培が行われるようになります。
現在、東信地方では上田市、佐久市、小諸市、北佐久群、南佐久群、小県郡などで栽培が行われています。しかし、近年は安価な中国や韓国産に押される形で生産農家が減少し、1970~80年代には年100t以上と国内有数の生産量を誇っていましたが、2017年には10t弱まで落ち込んでいます。(*1)

島根県松江市大根島

島根県松江市大根島は島根県東部に位置し、東は日本海と西は宍道湖と繋がる中海に浮かぶ東西3.3km、南北2.2kmの島です。この汽水湖に浮かぶ小さな島の主な産業は農業で、ボタンの苗木栽培などが盛んですが高麗人参の産地としても知られています。
その歴史は1773年、松江藩によって人参畑が開墾されたことにはじまります。当時は藩直営の栽培であり栽培や精製方法は極秘とされ、島民の多くが強制的に栽培に狩り出されていました。最盛期は会津藩を超える生産量があったと言われ、幕末には大根島のほか松江市など28町村で栽培が行われていました。
中でも大根島は島根有数の高麗人参の生産地として有名となり、大根島という島名も高麗人参が栽培されていることをカモフラージュするために使われるようになったという逸話が残るほどです。
やがて明治維新を迎えると松江藩は廃止され、明治5年には人参栽培が民営化されます。明治7年には自由販売が可能になると生産量も飛躍的に増加していき、台湾や香港など外国にも輸出されるようになります。最盛期には島民の3割から4割が栽培に従事していたと言われています。
大根島産の高麗人参は「雲州人参」と呼ばれ、本場韓国産並の最高級品として国内外で高く評価されています。このように高品質な高麗人参が採れる理由は、火山島である大根島がミネラル分を豊富に含んだ火山灰の土壌であるためとされています。

*1 参考元:<第7部 癒やす自然の恵み> (5)薬用人参:長寿しなの 彩食記:中日新聞(CHUNICHI Web)

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